私たちは日々、数え切れないほどの「やるべきこと」に追われています。
しかし、その忙しさの中で「今この瞬間に本当に大切なこと」を見失ってしまうことはないでしょうか。
2000年前のイエスと二人の姉妹、マルタとマリアの物語は、
まさにその「見極め」の重要性を教えてくれます。
物語のあらすじ
ある日、イエスはマルタとマリアの家を訪れます。
マルタは来客であるイエスをもてなそうと、料理や接待の準備に忙しく立ち働きました。
一方、マリアはイエスの足元に座り、話に耳を傾けています。
ついにマルタは不満を口にします。
「主よ、妹が私だけに仕事をさせているのをお気になさらないのですか?
手伝うように言ってください。」
するとイエスは穏やかに、しかし明確に答えます。
「マルタ、マルタ、あなたは多くのことで思い悩み、心を乱している。
しかし必要なことは一つだけだ。マリアは良いほうを選んだ。それは奪われない。」
厚遇よりも大切なこと
この場面でマルタがしていたことは、表面的には「善」であり「礼儀」でした。
大切な客人をねぎらい、快適に過ごしてもらおうとする態度は、
常識的にも社会的にも正しいものです。
しかし、イエスが強調したのは、
今この瞬間に最も価値があるのは、料理や準備ではなく、
彼の言葉を聞くことだったという事実です。
もてなしは後でもできる。
しかし、イエスが目の前で語る瞬間は二度と訪れないかもしれない──
その機会の重みをマリアは直感的に理解していたのです。
常識にとらわれる危うさ
マルタは常識的な行動に従っていました。
しかし、常識は必ずしも「その時の最善」を保証するものではありません。
むしろ、常識に縛られることで、
一度きりの貴重な機会を逃す危険があるのです。
イエスの言葉は、
「社会的な正しさよりも、その瞬間に最も価値のあることを選びなさい」
というメッセージでもあります。
状況は常に変わる──機会を逃さないために
私たちの人生においても、状況は絶えず変化しています。
今日ある人が明日もそこにいるとは限らず、
今できることが将来もできる保証はありません。
だからこそ、
– 目の前の人との対話を優先すべき瞬間
– 自分の学びや気づきを深めるべき瞬間
– 他の何よりも一つの出来事に集中すべき瞬間
これらを見抜く直感と勇気が必要です。
実践のヒント
1. **「今しかできないことは何か?」を毎日自問する**
優先順位は状況によって変わります。固定観念で選ばないことが重要です。
2. **常識よりも本質を選ぶ訓練をする**
習慣や礼儀も大切ですが、状況によっては意図的に手放す選択もあり得ます。
3. **機会の重みを測る感覚を磨く**
「後でもできること」と「今逃すと二度とないこと」を瞬時に見分ける習慣をつけます。
最後に
マルタの行動は決して間違いではありません。
しかし、イエスは「本当に価値ある瞬間を逃さないこと」のほうを優先しました。
人生を豊かにするのは、すべてをこなすことではなく、
その瞬間に最も大切な一点を選び取る力です。
あなたは今日、その一点を見極められるでしょうか?