進むことは、戻ることでもある──引き算の美学

「戻っていく」という選択

私たちの生活は、気づかないうちに「増やす」ことによって成り立っているように感じます。
たとえば、物を増やせば増やすほど、それを管理する負担は大きくなっていきます。
規律を増やせば増やすほど、私たちは息苦しさを感じるようになるでしょう。
そして、考えが増えれば増えるほど、私たちの頭の中は混乱し、何が本質か見えづらくなっていきます。

多くの人は、そうと気づかずに分岐の道を選びがちです。
元あったシンプルな状態から、どんどん枝分かれして、新たな情報やルール、所有物を取り入れていく。
これは現代社会において自然な流れかもしれません。

しかし、本当の智慧を持った人間は、違う道を選びます。
それは、分岐してしまった道を引き返し、ひとつに戻っていくという方向です。

「減らすこと」が生む力

智慧ある人は、物も、規律も、思考さえも、余計なものは削ぎ落とそうとします。
そして、減らす努力を惜しまないのです。
それは単なる節約やミニマリズムとは違い、本質に近づくための行為に他なりません。

何かを増やすということは、それに時間やエネルギーを投資するということでもあります。
つまり、増やせば増やすほど、自分が消耗する対象も増えていく。
そのため、賢い人ほど「いかに減らせるか?」を戦略的に考えるようになるのです。

部屋と心は似ている

たとえば、自分の部屋を思い浮かべてみてください。
物が無造作に置かれ、どこに何があるかわからなくなっている空間は、整っているとは言えませんよね。
掃除をするとき、多くの人は必要なものを残して、不要なものを手放すという選択をします。

このプロセスは、物理的な空間に限らず、自分の思考や行動パターンにも当てはまります。
不要な考えや、過剰なルール、人間関係における無駄な気遣い──そうしたものも、
実は日常のノイズとして私たちの内面を消耗させているのです。

減らすことは、強さになる

何かを「増やす」ことばかりに目が向いていると、
私たちの労力や集中力は、際限なく分散されてしまいます。
ですが、減らす道を意識的に選んでいくと、内面に無駄な消耗がなくなり、
次第に本来の力が戻ってくる感覚を得られるようになります。

その結果として、精神はよりクリアになり、
エネルギーは外へ浪費されることなく、自分自身の中に蓄積されていくのです。

「戻る」という進化

私たちはつい、「進む」とは何かを付け加えることだと考えがちです。
けれども、真の進化は、引き算の先にある本質を見極めることかもしれません。
分かれ道の先からあえて戻っていくという行動は、一見後退に思えるかもしれませんが、
それこそが最も洗練された選択であることもあるのです。

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