翌日。善田は道的の身分を現代でなんとか保つため、
公的機関に相談しに行くことに決めた。
頭が狂ってるとしか認識されないだろうが、
他に方法もないし、実際起きてしまった出来事なのだから仕方ない。
善田は道的に説明し、公的機関に身分を説明することを伝えた。
そして二人は役所に行き事情を説明することにした。
区役所につくと中は東京都内の区役所らしく雑然としていた。
とりあえず受け付けの窓口に事情を説明することにした。
「あの~すいません、あまりにも唐突なのでお話しづらいのですが、よろしいでしょうか」
善田が物腰し柔らかく受け付けに尋ねた。
「はい、なんでしょうか」
善田は事の顛末を話始めた。
「実は一昨日、私の家に過去からタイムスリップしてきた人間がいまして・・・」
「それで、身分を証明する方法がなく、なんとかならないかと思ってここを訪ねたのですが」
受け付けは一瞬固まって様子で、
「はぁ」
それから善田は冷静になって話しを進めた。
「こういった場合、本来私が心療内科に行くべきと言われてしまうかもしれませんが」
「事実本人がいるものでしてなんとかならないでしょうか」
受け付けも冷静さを取り戻し
「その方のお名前はなんですか」
善田はちょっと困り
「本因坊道的です、旧姓は小川です、350年前の囲碁棋士です」
少々お待ちください。受け付けは奥に入っていった。
「大丈夫でしょうか」
道的はかなり心配そうな状態だった。
5分程して受け付けが戻ってきた。
「まずご同伴者様の身分証明書の提示をお願いします」
善田は身分証明書を取り出すと受け付けに見せた。
「ぜんだ・ひろし様ですね」
「連絡先番号も控えさせてもらってよろしいでしょうか」
善田は携帯の連絡先を伝えた。
「まずは、戸籍住民課にいらして再度ご相談お願いします」
善田と道的は言われるままに窓口に向かった。
とりあえず、窓口につくと善田はありのままを伝えた。
「ちょっと信じられないですが、とりあえずご相談させてください」
窓口は怪訝そうな顔で対応し、順番待ちの受け付け番号用紙を取るよう指示した。
十数分後、善田達の番が回ってきた。
善田達は呼ばれた相談員の場所に座るとありまのままを説明した。
「ん~。ちょっと信じがたいですね。」
「ただ、ここに来られてしまうと、何とかはしないといけません」
「道的様は本当にご身分を証明するものを一切持っていないのですか」
相談員は困った表情を浮かべた。
「はい」
道的はそう答えるしかなかった。
「こういった場合、外国の方の転入届ということになるかもしれませんが・・・」
「前例のない事なので、一度案件を精査させてください」
「また、失礼ですがお二方の精神鑑定を依頼する場合もあります。予めご了承ください」
「案件が整理できましたら再度こちらから善田様にご連絡差し上げます」
善田は相談員の話を聞いた後
「承知しました、ご連絡お待ちしています」
と、言った後、道的と席を離れた。
道的が不安そうだったので、善田は道的の心境を思い計らい、
「大丈夫、多分なんとかなるよ」
と、一言いって区役所から帰路に入った。
善田の家は金銭的に余裕があったため暮らしの心配はなかった。
しかし、道的と善田にはまだ暗い影が残るのであった。
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