OpenAIに必要なのは「最強の人材」ではなく「最強の統治」
私が2025年を通して強く感じたのは、AI開発が“性能競争”だけでは語れなくなったという点です。これから問われるのは、能力そのもの以上に、組織がどう意思決定し、どう責任を持ち、どう軌道修正できるか、つまり統治(ガバナンス)です。
最大の敵は「属人化(単一障害点)」
超優秀なサブリーダーを一人置けば解決、という発想は危険です。優秀であるほど、その人がいないと回らない構造になりやすい。だから中核人材に最初から求めるべきは自分自身の属人化を消す設計です。判断の根拠、反証手順、例外処理、更新条件を「手続き」と「ログ」として残し、再現可能な統治に落とす。これが最初のミッションになります。
最小安定構成「統括1+実務3」という4人核
人数が多いほど良いわけではありません。議論は拡散し、責任は薄まります。私の結論は、チームが結合できる最小単位は3人であり、そこに責任者兼説明者として統括を1人置く「1+3」が妥当だということです。ただし4人核が万能ではありません。実働を支えるために、核の外側に独立レビュー(社内外の二層)を置き、少人数で決めて別系統で検証する構造が安定すると考えます。
最初に必要なのは「理念→制度」の翻訳者
AGIをカタログスペックで定義する段階は越えています。重要なのは「何を成功とみなすか」「何を恐れて回避するか」という価値判断です。CEOの価値判断は本人だけでは言語化しきれないため、異なる視点から対話で抽出し、要件分解し、評価制度へ翻訳できる人物が最初に必要になります。ここで注意すべきはYESマン化です。反対意見は人格に依存させず、レッドチームや異議申し立て要件など手続きで担保すべきです。
評価制度は「目的整合性」と「更新ルール」で作る
AI統治の評価は難しいです。成功が「事故が起きないこと」になりがちで、未来に遅延して現れます。だから評価は、短期KPI一本ではなく、最終目的への整合性(目的整合性評価)で行い、さらに重要な前提として改訂ルールを制度化するべきです。価値判断は状況で変わる以上、「固定化」ではなく「仮説として定義し、いつ・何を条件に更新するか」を明文化しておく。これが内政のブレを抑えます。
速度は落とすのではなく「配分」する
アクセル全開の文化に統治を入れれば速度は落ちます。問題は“遅くなること”ではなく、どこを速くし、どこにゲートを置き、どこを止めるかを、状況に応じたルールと手続きで決めることです。統治の仕事はブレーキではなく速度の配分設計です。ここが整理できれば、残りの専門人材はヘッドハンティングでも集められます。
まとめ:最強のAGIの前に、最強の統治を
私の提言は単純です。最強のAGIを作る前に、最強の統治を作る。これは大規模組織の内政のようなものです。属人化を消し、反対意見を手続き化し、理念を制度に翻訳し、更新可能な評価制度を敷く。0→1の原理設計が正確なら、後は補填できる。最後まで伸びしろがあるのは、結局0→1の構築、つまり「なぜ」を言語化できる組織です。
※本稿は公開情報を材料にした推測と提言であり、OpenAIの内部情報ではありません