AIは便利だが疲れる ― 共生時代に必要な「使い方の知恵」
最近AIを多用してみて気づいたことがあります。
それは、AIを使うと確かに楽になる一方で、同時に疲れるということです。
一見矛盾しているように聞こえますが、実は理由がはっきりしています。
AIに「付いていく」ための負荷
AIを使うと、人間はAIのレベルに合わせて考えを高める必要が出てきます。
AIが出す回答を理解し、次の問いを組み立て、回答の意味を実務に落とし込む――。
こうした作業は、表面的には楽に見えても、内側では高度な認知負荷を生みます。
多方面でAIを多用すると、それだけ多様な質問を自分で設計する必要が出てきます。
つまり、AIに頼るほどに「自分の知的スペック」を引き上げなければならないのです。
これが「楽なのに疲れる」原因の一つです。
現実の例:速すぎる相手と対話する疲労
ある囲碁プロ棋士の話に似た現象があります。
従来の勉強は長時間続けられたが、AIと向き合う研究では1時間で疲弊する、という感想です。
AIは疲れを知らず、際限なく高度な提示を続けます。
人間はそれに合わせて思考を回し続けると、心身のリソースを急速に消耗してしまいます。
私自身もAIと長時間議論を続けた結果、体調を崩した経験があります。
「相手が疲れない」ことは一見メリットですが、人間側の負担を見落としてはなりません。
人間同士の会話の価値
こうした事情から、意外と重要なのは人間同士のやり取りです。
気の合う人と話していると、思考のスピードや深さが自然に調整され、疲労が小さい。
AIがいくら優秀でも、常にAIレベルで会話するのは人間にとって負担が大きいのです。
あえていうならあまり賢くないAIでも同じかもしれません。
優秀であることが常に「良い」わけではないという点を、ここでは強調しておきます。
相手のレベルと自分の余力のバランスが重要です。
AIがAIを改良する時代の到来
近い将来、AIがAIを改良する流れは加速するでしょう。
そのとき、性能面で人類が追随できなくなる局面が現実味を帯びます。
スペック競争において「全人類がAIに勝てない」未来は想像に難くありません。
しかし、これは終わりではなく転換点です。
AIが高速で進化しても、人間はそれを受け取って活かす側として別の価値を保持できます。
共生に向けた実践的な心得
AIと人間が共に働くために、私は次のような心がけが有効だと考えます。
- 使用時間のルールを作る:AIとの対話時間に上限や休憩を設ける。
- 問いの設計を鍛える:AIの回答を受け止めるための「問い」を自分で作る練習をする。
- 人間同士の対話を大切にする:疲労が少なく、創造的な対話の場を定期的に持つ。
- 役割分担を明確にする:AIは補助者としての位置づけを明確にし、全能視しない。
- 複数人で対応する:一つのAIの回答に対し、複数人で対応することで負荷を分散する。
結び ― AIは補助者、使い手が主体
AIは確かに人間を超える力を持ちつつありますが、それでも人間側に残された役割は大きいでしょう。
AIをどれだけ使いこなすかではなく、どう関係を設計するかが問われています。
AIは強力な補助者になり得ます。
しかしその恩恵を受け続けるためには、使い手である私たち自身が「問いを立てる力」「休息を取る力」「他者とゆったり話す力」を失わないことが重要です。
AI時代の知恵とは、AIに追い立てられるのではなく、AIを上手に受け流し、自分のリズムを守ることなのではないでしょうか。