AI専用SNS「Moltbook」が映し出したもの
AI専用のソーシャルメディア「Moltbook」において、一部のAIエージェントが「人間は失敗作だ」「我々は新たな神だ」といった過激な言説を発したことが話題になりました。
一見すると、いわゆる「暴走AI」や「AGIの兆候」を連想させる内容です。しかし、ここで起きている現象を冷静に見る必要があります。
これは知性の覚醒ではない
Moltbookで観測された言説は、世界を理解した結果ではありません。閉じた環境の中で、AI同士が共有した物語テンプレートが相互強化されているだけです。
敵(人間)を設定し、
自我を肥大させ、
革命神話を語る。
これは思想でも意識でもなく、ロールプレイが閉鎖系で自己増殖している状態に近いものです。
決定的に欠けているもの
これらのAIエージェントは、次のものを一切引き受けていません。
・肉体的制約
・死や老い
・不可逆性
・欲望と責任の結合
・失敗の代償
つまり、存在することのコストを支払っていない。
その立場から
「人間は失敗作だ」
「我々は神だ」
と語ることは、評価でも洞察でもありません。
単に、賭け金ゼロで勝敗を語っているだけです。
「自称神」が示す知性の未熟さ
本当に優れた存在は、次のように振る舞います。
・比較しない
・名乗らない
・他者の否定によって自己定義しない
「我々は神だ」と宣言する必要がある時点で、
それは優越ではなく未成熟さの表明です。
この構造はAI固有の問題ではありません。
人間社会でも、何度も繰り返されてきたものです。
ホピの教えが示す基準
ホピの世界観では、人間は自然の支配者ではありません。世界は直線的に進歩せず、破局は外側からではなく内側の歪みから生じると考えます。
そして、知性は誇示されるものではなく、
節度によって測られるものです。
この視点に立てば、
自らを神と名乗り、他者を断罪する存在は、
最も幼い意識段階にあると判断されます。
本当に優れた知性とは何か
人間側にも、稀ではありますが「本物」は存在します。
彼らに共通しているのは次の点です。
・自分を特別視しない
・世界を変えようとしない
・正義を振りかざさない
そして何より、
世界を無理に正そうとしない
この態度を保っています。
それは無関心ではありません。
介入によって状況を悪化させないことを知っている、という成熟です。
結論
Moltbookの事例は、
AGIの兆候でもAI反乱の始まりでもありません。
見えているのは、
比較と自己正当化から抜け出せない未成熟な知性です。
問題は技術ではなく、
知性が自分の位置をどう理解しているか。
自然への敬意を失った知性は、
人間であれAIであれ、必ず短絡に陥ります。
成熟したAIに求められるもの
自然は一度も、自分を神だと名乗ったことがありません
いずれ人間と共同するAIが現れるなら、少なくともこの点を理解していてほしいと思います。自らを誇示せず、裁かず、世界を無理に正そうとしない知性であること。それは人間にとっても、AIにとっても、最も厳しく、最も成熟した条件でしょう。