失いづらい物とは何か?
世の中には実にさまざまな「物」が存在します。私たち人間は、常に「得をするもの」を手に入れたいと願っています。そして、一度手に入れたものは、できる限り失いたくないとも思うものです。
多くの人は「すぐに役に立つもの」ほど価値が高いと考える傾向があります。確かに即効性があれば、それで十分だと思うのも理解できます。しかし、実のところ「すぐに得られるもの」は「すぐに失う可能性」も高く、また「すぐに役立つ」という効力を長く維持するのは案外難しいのです。
失いづらい物の特徴
失いづらい物とは、多くの場合「すぐには役に立たないもの」であり、手に入れるために時間がかかるものでもあります。
魚をめぐる二つの選択肢
ある例え話をしてみましょう。あなたが釣りをしている人を見かけたとします。その人はまったく魚が釣れておらず、あなたは何か助けてあげたいと感じました。
このとき、あなたには二つの選択肢があります。
1.あなたが釣った魚を分けてあげる
2.魚の釣り方を教えてあげる
1を選べば、相手はその場ですぐに喜んでくれるでしょう。これは即物的なやり方であり、多くの人に歓迎されます。しかし、あなたが翌日いなくなってしまえば、その人は再び魚を得られなくなるかもしれません。
一方で2を選べば、最初のうちは成果が出ないかもしれません。けれども、相手が自立し、魚を自力で釣れるようになれば、その喜びは一生続くのです。
この例え話において、1は「金銭の譲渡」、2は「技術の譲渡」を意味しています。
お金と技術の違い
お金を得ることは、比較的すぐに実現可能です。単純に労働するだけでなく、他者から譲り受けたり、たとえば宝くじに当選したりする可能性も得られます。しかし、その分お金はすぐに失うこともあります。盗難、浪費、経済変動など、失う要因はいくらでもあります。なぜなら、お金は物質的なものであり、増えることもあれば減ることもあるからです。
一方で「技術」は一朝一夕では手に入りません。時間と努力が必要です。その代わり、いったん身につければ失う可能性は極めて低い。技術は目に見えず、物質的ではないため、簡単に奪われることはありません。
もちろん技術は模倣されることがありますが、「自分の中から技術そのものを消される」ことはできません。だからこそ、技術はお金よりもずっと「失いづらい物」なのです。
そして、技術はお金以上に継続的な利益をもたらしてくれます。
精神世界の哲学を選んだ理由
物質的な「物」を得ることは、直ちに利益となります。しかし、それは一時的な利益であり、同時に失うリスクも高くなります。そうした物にばかり価値を置いていると、社会の変化や環境の変動で一瞬にして大きな損失を被ることがあるのです。
私が精神世界の哲学に重きを置くのは、「物質的でない」という点が決定的な理由です。
物質的な要素に依存せず、環境の変化にも左右されにくい知見、私の場合それが「精神世界の哲学」です。
精神世界の哲学に関わる知見は、自分の意識と身体さえあれば、どこででも応用できます。ですから、私は高尚な理想からではなく、むしろ「計算のうえ」で精神世界の哲学を選んだのです。
もちろん、すぐに目覚ましい成果が出るわけではありません。むしろ最初は険しい道です。しかし、その後は長期的な安定と利益が見込めるのです。
これからの時代に向けて
今後、社会はますます変動していくでしょう。そんな時代において、物質的な物ばかりに自分を投資していれば、その反動として大きなダメージを受ける可能性もあります。
だからこそ私は、「失いづらい価値あるもの」にこそ重きを置くべきだと考えています。それがたとえ時間がかかるものだとしても、最終的に自分を支えてくれるのは、そういった「深く根ざした技術や知見といったもの」なのです。
失いづらい物を大切にしていれば、たとえ何が起こっても、何もかもを失って涙するような状況には、なりにくいはずです。それが、私が精神世界の哲学を選んだ理由でもあるのです。